エネルギー業界における新たな機会と変革

エネルギー業界における新たな機会と変革

* : * : admin * : 2017-12-12 * : 22
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       エネルギー需要は長期的にも成長が見込まれ、その多くを中国、インドを含むアジア諸国がけん引する。需要が成長する中で、エネルギー業界を4つの大きなトレンドが変えていく。4つのD、すなわち、Decarbonazation(低炭素化)、Decentralization(分散化)、Deregulation(規制緩和)、及びDigitalization(デジタル化)である。

       エネルギー事業のビジネスに影響をもたらす4つのメガトレンド
       そのような中で大幅に増加するアジアのエネルギー需要を支えるために、幾つかの対応が必要になる。1つは、エネルギー供給に関して、高効率の火力発電で大規模な需要拡大に対応しながら、他方で低炭素化に向けた再生可能エネルギー導入、拡大も推し進めること。もう1つは、これまでは資源の輸出国であったアジア諸国にこれからは資源が流入していくことになるために、エネルギーのフローが変化していく。その中で、エネルギーセキュリティを確保し、かつ、安価な調達を両立すること。
       これらの求められる対応は、日本の企業にとっても事業機会をもたらす。すなわち、高効率の火力発電所のインフラ輸出、再生可能エネルギー発電とそれを中心とした分散型エネルギーシステム、エネルギートレーディング、小型LNGを用いたエネルギー供給システムの構築・導入などが新たなビジネスチャンスとなるであろう。 縮小する日本市場、競争激化でシェアと収益性の低下がまぬかれない日本市場は何とか守りつつ、アジアで新たな機会を捉えていきたい。
       世界の一次エネルギーの消費は、2030年までに17%増と大幅に伸びる見通しである。2030年断面では、非OECD諸国が一次エネルギー消費の70%近くを占め、中国とインドを含むアジア諸国が2030年に向けたエネルギー消費の増分のほとんどを占める。
       中国のエネルギー需要は2015年から2030年の間で約25%増加し2030年には中国の需要がヨーロッパのほぼ倍、米国のそれを50%以上上回る規模になる。インドでも需要が約48%も伸び、2030年にはアフリカ全体の需要を上回るレベルである。エネルギー効率の向上も進むものの、人口増加と産業化の進展がエネルギー消費を押し上げていくと見られている。(図A参照)
       燃料を見ると、化石燃料が一次エネルギーの主要なソースではあり続けるものの、全体としてのエネルギーミックスは変化していく。環境規制が強化される中で、石炭や石油がそのシェアを落とし、他方で化石燃料の中では相対的に低炭素であるガス及びカーボンニュートラルなエネルギー、すなわち原子力と再生可能エネルギーがシェアを拡大していく。再生可能エネルギーの成長率は最も高いが、シェアは10%に満たない。
       生産・供給側は、ロシアと中東が主要な化石燃料の輸出地域であり続けるが、幾つかの変化が想定される。米国では、主にシェールによる石油とガスの増産がそれぞれ2035年に向けて40%程度、60%程度が見込まれている。一方で需要がほぼフラットに推移するとみられることから、2021年ころにはエネルギー自給国となる見通しである。さらには、天然ガスはすでに輸出を開始しており、石油に関しても2029年に輸出国に転じる見通しとなっている。
       中国では、化石燃料の生産拡大が継続し、2035年には中国が世界第2位のシェールガス生産国、さらには米国を抜いてシェア31%の世界最大の原子力発電国となると見られている。しかしながら需要拡大に追い付くことはできず、世界最大のエネルギー輸入国となる。EUは、一次エネルギーの生産量は2035年に向け10%減少する一方、再生可能エネルギーはシェア36%で最大の発電源となる。

       ●4つのメガトレンド
       需要と供給に関して大きな変化が想定される中、業界に質的な変化を促す4つの大きな潮流がある。4つのD、Decarbonization、Decentralization、Deregulation及び、Digitalizationである。(図B参照)

       Decarbonization:低炭素化
       温室効果ガスの排出により地球温暖化が叫ばれ、IPCC(International Panel of Climate Change)のレポートなどでは、その悪影響に対する警鐘が鳴らされた。京都議定書、欧州の202020ターゲット設定、それに基づく各国の目標設定と政策支援などで低炭素化への取り組みが進められている。京都議定書では強いペナルティ、先進国と新興国の間の不公平感などもあり、中国や米国などの排出大国が枠組みに参加していなかったが、直近のパリ協定により、両国を含む初めての国際的な枠組み合意に達した。このような流れは、大規模のエネルギー供給に資する化石燃料の中でも特にガス、また、カーボンニュートラルな原子力発電、再生可能エネルギーの成長を促進する。 火力発電の効率化、消費側の省エネルギーなども進められて行くであろう。

       Decentralization:分散化
       これまでのエネルギーシステムは、主に、消費地から必ずしも近くない大規模な設備でエネルギー製造を行い、それを消費地に届けるというモデルである。これに対して、分散型エネルギーシステムにおいては、エネルギー製造が分散化され、より消費者・消費地に近いところで生産される。分散型の利点は、環境配慮の側面からは、輸送によるロス(電力の送電ロス)が減少するため、省エネ、低炭素に貢献できる。安定供給の観点からは、数少ない集中型の製造設備に依存しないために安定性が高まる。
       アジア諸国では島嶼国もあり地理的な状況から電化率が100%に満たない状況であり、再生可能エネルギー、コージェネレーションなど、分散型の多様なエネルギー供給が電化率向上、エネルギーシステムの最適化に貢献する。ドイツにおいても、長期的に分散化が進展していくと見られており、2030年断面で、集中型は発電量ベースで半分程度に減少するとの見方もある。  また規模の変化のみならず、収益性の変化もあり、集中型の収益性が減少する一方で分散型は収益性が高まる、という見方がある。このようにエネルギー製造の分散化が進む中で、供給をコントロールできない太陽光や風力等の再生可能エネルギーも増えるため、需要と供給をコントロールし、最適化する機能が重要性を帯びてくる。スマートグリッド、VPP(Virtual Power Plant)といった概念と技術もこれら最適化ニーズに対応する。

       Deregulation:規制緩和
       現在日本で、電力・ガス業界の自由化が進められている。製造(発電)、流通(送電 ・配電)、及び販売というバリューチェーンがある中で、従来は、垂直一貫事業モデルで、地域ごとに事実上の地域独占が認められていた。 社会インフラとしての効率性から二重投資と競争がなじまない送電・配電は別として、小売と発電領域に競争環境を導入しコスト低減やサービスの向上を促す。垂直一貫事業モデルをアンバンドル(垂直分離)し、発電と小売領域への事業参入を自由化する。
 導入状況は地域により異なる。 欧州では、1990年に英国で電力ガスの自由化が始まり、大陸でもドイツで1998年、その他の国々も順次自由化を進めた。米国においては、電力料金の違いなどを踏まえて、州ごとに自由化の方針と導入状況が異なる。
       日本では、2016年に電力の小売り全面自由化、2017年にガスの小売り全面自由化が導入された。1995年に独立系発電事業者の発電市場への参入が認められ、2000年からは特別高圧顧客への小売りが自由化されて以降、ようやく小売り全面自由化まで到達した。電力で2020年、ガスでは2022年にアンバンドリングが予定されており、一連の自由化が完了する予定である。
       この規制緩和は、従来からの事業者にとっては、事実上独占であったホームマーケットを競合他社に侵食されるということにつながる。ホームマーケットを守りながら、いかに新たな領域で事業展開を拡大するか、が大きな課題となる。電力会社がガスを売る、ガス会社が電力を売る、国内他地域に進出する、海外に展開する、など、さまざまな戦略的なアクションが要求される。

       Digitalization:デジタル化
       IoT、インダストリー4.0、AIなど、さまざまデジタル技術の導入活用が、業界を問わず進みつつあるが、エネルギー業界もその例に漏れない。例えば、タービンの保全については、予知保全の導入が進んでいる。シーメンスは自社が製造販売した世界中のタービンとつながり続けていて振動、温度、稼働時間などの運転データを収集、これを分析して常態との乖離(かいり)を確認・チェック、異常がみられる場合に、保全を実施する。これにより、ダウンタイムの最小化、過剰な交換部品在庫の削減などが実現できている。また収集されたデータを、次世代製品の開発にも活用しているという。デジタル工場を導入し、発電所の建設から運用・保守までを、建設開始前にあらかじめシミュレーションすることにより、建設コストを削減、建設リードタイムも短縮が可能になる。 デジタル技術の活用は端緒についたところであり、これからより幅広な用途において利用が進展していくことが想定される。

       ●新たな事業機会:アジアでのエネルギーを捉える
       冒頭でみたように、グローバルでエネルギーの需要が拡大する中、アジアがそれをけん引する。 中国とインドが大きいがその他アジア諸国も大きく需要を伸ばす。
       そのため、アジアの持続可能なエネルギーシステムを構築する必要がある。すなわち、温室効果ガスの排出量拡大を極力抑制しながら、地域に賦存する資源も最大限活用することで、エネルギーセキュリティを確保しつつ、エネルギーミックスを最適化する。
       具体的には、例えば、大規模高効率な火力発電所によるエネルギー供給、再生可能エネルギーや小型LNGを活用した分散型エネルギー供給システムの展開、エネルギーの最適調達を可能にするエネルギートレーディング、が考えられる。これらを実現していく中で、日本の企業は、アジアのエネルギー供給に貢献しつつ、事業機会を獲得し成長につなげたい。

       1、大規模・高効率の火力発電でエネルギー需要拡大の規模に対応
       アジアにおいて、今後エネルギー需要量が飛躍的に拡大していく。これに対応するため、現地の化石燃料資源も活用し発電容量を早期に拡大する必要がある。併せて、温室効果ガスの排出を極小化することが必要となる。従い、高効率な火力発電設備を導入し容量規模拡大と温室効果ガス排出の抑制を両立する。IEAのアウトルックでも、2040年に向けた燃料別の発電量見通しにおいて、石炭発電が最大のシェアを占め、また年成長率でも再生可能エネルギーに次ぐ2番目の伸び(5.6%)と想定されている。再生可能エネルギーは成長率では7.6%で最も高い成長率を期待されているが、絶対量では石炭、ガス、水力に及ばない。(図C参照)
       アジアにおける供給効率は、OECD諸国と比べて低い現状を踏まえると、日本企業としては、高効率大規模火力技術で貢献し、IPP事業を拡大していきたい。

       2、再生可能エネルギーや小型LNGを活用した分散型エネルギーシステムで電化率向上、エネルギーコスト低減、及び低炭素化に貢献
       アジア諸国は島嶼部が多く、現状では高コストのディーゼル発電での電力供給のケースが多い。電化率が100%に満たず電化されていない島嶼も残っている。このような中で、再生可能エネルギーや小型LNGを用いて、電化率を高め、低コスト化していくことが有効だ。
       再生可能エネルギーに関しては、低炭素化とエネルギーセキュリティの観点から、アジアにおいても積極的な推進状況が見られる。資源は国により多様に賦存していて、インドネシアは地熱と太陽光、タイでは風力、太陽光、バイオマス、台湾では風力と太陽光、といった具合である。各国とも、再生可能エネルギーの導入目標を設定したり、固定価格買取制度を設定するなど、導入を促進している状況だ。
       太陽光や風力などの再生可能エネルギーは発電量が揺らぐため、需要とマッチングさせるためには、蓄電機能も備えたエネルギーマネジメントシステムが不可欠である。これには過去データの分析を踏まえた発電量予測や、多くの発電設備と蓄電機能をトータルで最適化する機能が必要になる。日本の多くの企業も開発に余念がない所であり、この領域での貢献余地も大きいだろう。
       LNGに関しても、短中期ではグローバルでのLNG供給力が高まる中で、サプライヤーサイドからも新たな需要を開拓しようとする動きがある中、小型LNGを活用して、アジアの島嶼部にLNG供給を行い、ダウンストリームを含めたビジネスの可能性があるのではないか。
       フランス大手のエンジーの戦略にもあるように、揺らぐ再生可能エネルギーとそれを補完するガス火力をセットで低炭素の大規模エネルギー供給システムを展開していくことも考えられるだろう。

       3、エネルギートレーディング
       アジアを中心においてエネルギー需要が増加していく中で、エネルギーの供給元も多様化が見込まれる。
       LNGについてみてみると、需要側は2010年は22か国が輸入国であったのに対し、2016年には35カ国が輸入国となっている。経済成長に伴うエネルギー需要の伸びに対応する目的が多く、タイやマレーシアのアジア諸国のみならずエジプト、ヨルダンなども新たな輸入国になる見通しである。ポーランドやリトアニアはロシア依存を避ける目的でLNG調達に乗り出す見通しである。
       他方の供給側は、2017年から輸出を始めたシェールの北米のみならず、オーストラリア、ロシアなどからの輸出が拡大する見通しである。加えて現状輸出国の動きの変化もあり、ロシアは、欧州諸国への輸出が減少する中で新たな供給先をアジアなどに求めようとしている。(図D参照)
       そしてLNG需要の拡大を見通して多くの新たな液化基地の設置が進められていたために、2020年代半ばまでは需給が緩い状況が続くとの見通しが持たれている。
       このような中で、LNGの流入増加が見込まれるアジアにおいて、調達の確保と価格の安定化を図るため、トレーディングを含めた取り組みが重要となる。日本企業としては、新たな需要地に対して自社の調達能力・トレーディング能力を活用して、需要開拓・ガス
       供給を行う、これによりLNGトレーディング事業という新たな事業を作ることができるのではないか。