太陽光の基幹電源化に貢献したい――IT×エネルギーを推進するNTTスマイル

太陽光の基幹電源化に貢献したい――IT×エネルギーを推進するNTTスマイル

* : * : admin * : 2017-12-12 * : 80
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       代表取締役社長 小鶴慎吾氏 
       「エコめがね」が見守る発電設備容量の合計は1.2GW  

       NTTスマイルエナジーは2017年11月14日、東京都内で会見を開き代表取締役社長を務める小鶴慎吾氏が現在の事業状況と今後の戦略について説明した。設立から6年目を迎えた同社の主力商材である太陽光発電の遠隔監視サービス「エコめがね」は、順調に接続発電所数が伸びているとアピール。さらに今後は、VPP(バーチャルパワープラント)に関する取り組みを強化する他、AIを活用したエネルギーサービスの提供も予定しているという。
       エコめがね O&Mアラカルトサービスの概要(クリックで拡大) 出典:NTTスマイルエナジー
       エコめがねは、太陽光発電設備の発電量の見える化や、発電所の診断が可能になる遠隔監視サービス。10kW未満を対象とする住宅用の余剰買取向けと、10kW以上の産業向けに展開している。同社は、エコめがねを販売パートナーに卸提供するB2B2Xのビジネスモデルをとっており、太陽光発電設備の施工店などが販売パートナー(センターB)となって、エコめがねによる付加価値を施主(X)に提案する体制だ。エコめがねの導入件数は年々順調に増加しており、2017年11月時点で4万カ所、発電容量を合計すると約1.2GWにものぼり、原子力発電1基分以上になるという。
       2017年9月から販売を開始したエコめがねの最新商品「モバイルパックマルチコネクト」は、低圧の全量売電設備のパワコンに後付けできるタイプの遠隔監視システムだ。従来の商品では、接続可能なパワコンメーカーがオムロンと新電元工業に限られていたが、モバイルパックマルチコネクトでは、対応するパワコンを主要メーカー7社の製品にまで拡張したのが特長だ。パワコンとはRS485通信で接続し、詳細にエラーを確認できるという。小鶴氏はモバイルパックマルチコネクトについて、「市場で流通しているパワコンメーカーの9割には対応できた」と胸を張る。
       一方で小鶴氏は低圧の太陽光発電設備について、遠隔監視などのO&Mサービスを導入していない設備がまだ多数存在することを指摘。3カ月以上売電が停止した低圧設備の約75%は、遠隔監視を導入し、適切な処置を行っていれば防ぐことができた要因で停止しているという。エコめがねを導入している設備では、パワコンの自動復旧で解決できる可能性の高いエラーの場合、1拠点当たり年間4回、自動復旧では解消できない現地対応が必要な緊急のエラーは年平均0.6回発生しているという。
       小鶴氏はこのようにO&Mの重要性に言及した上で、NTTスマイルエナジーではO&Mサービスの提供に取り組む販売パートナー向けに、エコめがねを活用した「O&Mアラカルトサービス」を拡充した点を紹介。これは日々の見守りや異常時の駆け付け対応、料金請求など、販売パートナーにとって負荷の高い業務の一部をNTTスマイルエナジーが代行するというサービス。これにより、販売パートナーは、顧客開拓に専念しやすくなるという。

       VPP実証実験の参画やAIを活用したサービスも開発中
       同社ではこうしたエコめがねの提供の他、新しい事業およびサービス展開に向けた取り組みにも注力している。PPA(Power Purchase Agreement)モデル向けサービスの拡充や、VPPを活用した家庭用蓄電池の遠隔統合制御、AIによる新たな電力価値の創出などだ。
       PPAとは電力会社と発電者の間で締結する、電力販売契約のこと。このPPAの発展系として、最近では消費者(顧客)の敷地や住宅屋根に、事業者が自社の所有物として太陽光発電システムを設置し、そこで発電した電力を顧客に販売する第三者所有モデルと呼ばれる太陽光発電事業を推進する事業者も登場し始めている。
       NTTスマイルエナジーでは、こうした第三者所有モデルの事業を手掛ける日本エコシステムやデンカシンキなどの事業者に、自家消費分の電力料金精算機能を搭載した専用エコめがねの提供も開始しており、引き合いも増えているという。また、学校への太陽光発電設備設置を推進する新たな電力サービス「学校応援でんき」の企画コーディネートや、公共施設向けのPPAなど地方自治体向けサービスも展開している。
       VPPに関する取り組みとしては、2016年度から経済産業省のVPP構築実証事業に参画し、需要側である家庭に設置された蓄電池の遠隔統合制御技術と、送配電事業者などの上位系統との連携を実証中だという。これにより、朝夕の急激な需要変動(ダックカーブ)の抑制や電源I-b(15~30分以内に応動)の調整力を得ることを目指す。
       VPPに関連し、AIを活用した蓄電池制御の最適化サービスも現在開発中だ。エコめがねに蓄積された発電設備や天気など各種データを基に、AIが発電量や消費電力量の予測を行うサービスだという。この予測を活用することで、蓄電池の充放電タイミングや自家消費、売電の切り替えなどを最適に制御しやすくする狙いだ。2018年度中にエコめがねの一機能としてリリースを行い、順次機能を拡張していく予定としている。この他にも、需要家同士が直接電力を取引するP2P(ピア・ツー・ピア)サービスの実現に向け、ブロックチェーンを活用した電力流通基盤の研究も進めているという。
       エコめがねをコア技術とし、各種サービスを展開する同社は、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入促進や維持管理、系統安定化をITによって支えていく戦略を強調する。小鶴氏は「太陽光発電の基幹電源化や再生可能エネルギーの最大限導入などに取り組み、パリ協定実施への貢献をしたい」と意気込みを語った。