耕作放棄地に太陽光発電 米価下落など背景に

耕作放棄地に太陽光発電 米価下落など背景に

* : * : admin * : 2016-07-25 * : 73
      東北地方の農地で、耕作放棄地を農地転用して太陽光発電を導入するケースが相次いでいる。背景には農家の高齢化や後継者不足に加え、米価下落など稲作経営の急速な変化がある。農地転用を含む各種手続きから設置後の維持管理まで一手に手掛ける企業も登場、実績を伸ばしている。
      宮城県登米市南方町の藤浦秀敏さん(53)は今年2月、水田だった土地約220平方メートルに太陽光パネル90枚(出力26キロワット)を設置した。「作業しづらく収益が上がらない場所だった。遊ばせて税金を払うよりは売電で少しでも収入の足しになればと思った」と語る。
      販売したのは太陽光発電システムを販売・施工するリベラルソリューション(東京)の仙台支社(仙台市若林区)。2014年に耕作放棄地を農地転用した上で太陽光発電を導入する事業を始めた。
     最大の特徴は販売・施工だけでなく、煩雑な農転手続きの代行、設置後20年間の草刈りなど設備管理をセットにしたことだ。
      同社によると、水田10アールに出力50キロワット分の太陽光パネルを設置する費用は1700万~1800万円で、年間20万円程度の収益が見込めるという。積極的な営業活動の結果、これまでに青森、岩手、宮城、福島各県で計約80件を手掛けた。東北での実績を踏まえ、同社は今年5月から全国展開を始めた。
      東北の15年の耕作放棄地は9万ヘクタールで、20年前の約3倍に拡大。主に農業で生計を立てる従事者は20年間で3割減少し、31万5000人になった。同社の好調な実績の要因には、後継者難や米価下落などで転用を望む稲作農家が増えていることがある。
      野沢宙矢仙台支社長は「日照が良い農地は太陽光の適地。持て余した土地の有効活用で農家の役に立ちたい」と話す。
      [農地転用]優良農地保護の観点から、農地を他の用途に利用する際に必要な農地法上の手続き。周辺の農業環境への影響などを考慮し、4ヘクタール以下の場合は知事が許可、不許可を決める。営農条件が特に良好な第1種農地、基盤整備された農業振興地域の転用は原則認められていない。