「大国になりつつあるインド」と米国はどう向き合うか

「大国になりつつあるインド」と米国はどう向き合うか

* : * : admin * : 2017-12-12 * : 89
图片18.jpg
       米外交問題評議会シニアフェローのAlyssa Ayresが、フォーリン・アフェアーズ誌11-12月号への投稿論文で、インドは経済的、軍事的に世界の主要プレイヤーになりつつあり、米国はそのようなインドを受け入れるべきである、と述べています。論文の要旨は以下の通りです。
       インドはこれまで世界の主要プレイヤーとは考えられていなかったが、今、モディ首相の下、世界で中心的な地位を求める「指導的国家」になりつつある。
       インドの変貌の中心は経済である。インド経済は2029年には、中国、米国に次ぐ世界3位となるだろう。人口は2024年に中国を抜いて世界一になるだろう。
       労働人口は2050年まで増え続けるだろう。2050年に労働人口の中央値は、日本53歳、中国50歳、西欧47歳に対し、インドは37歳と若い。
       インドの中産階級は2025年には約6億人となり、大きな市場を提供する。
       経済力の増大は軍事力の増大につながる。インドの軍事支出は2016年ですでに世界の第5位で、過去5年間軍事装備品の輸入で世界一であった。同時に自前の先端防衛技術も発展しており、現在自国産の空母2隻目を建造中である。
       インドは最近外交的主導権を取るようになっている。気候変動では2015年のパリ会議で、世界の太陽光発電同盟の本部をインドに招致した。
       安全保障面では、中国に対抗して、インド洋で主導権を発揮している。
       国際機関、組織については、国連安保理の常任理事国入りなどに努める傍ら、BRICSの新開発銀行での融資を始め、上海協力機構に参加した。
       インドが非同盟の伝統に基づく、世界での受け身の姿勢を変えるのに対応して、米国もインド政策を変えるべきである。
       台頭するインドと協力することは常に容易とは限らない。インドは何よりも政策の独立性を重視し、正式の同盟は拒否し、過去の通商交渉が示すように、世界の共通の見解に背くこともある。
       緊密な防衛のパートナーになり得るが、米国の同盟国のようにはならない。
       貿易、経済関係の改善は望むが、米国が欲するような市場開放には容易には応じない。
       米国政府は昨年インドを「主要な防衛のパートナー」と指定したが、これはインドが米国の正式な同盟国ではなく「自然な同盟国」となることを希望していることを反映している。米国はインドがイラン政策やロシアとの関係で立場を異にすることを受け入れ、共通の利益を追求すべきである。
       米国はインドの国連安保理常任理事国入りを引き続き支持する傍ら、インドがOECD、IEA、APECといった政策決定にかかわる国際機関、組織に加盟するよう働きかけるべきである。またインドをG7に加えることも検討すべきである。
       モディ首相、シン前首相は、世界の舞台で「我々の時が来た」と確信している。
       米国はそのようなインドを受け入れるべきである。
       出典:Alyssa Ayres ‘Will India Start Acting Like a Global Power?’ (Foreign Affairs, November/December, 2017, pp.83-92)
       インドが経済的、軍事的に世界の主要なプレイヤーになりつつあることは間違いありません。眠れる獅子がようやく目を覚ましつつあるという感じです。
       13億の国民を民主主義で統治しているのは驚きです。一つの壮大な実験でインドはそれに成功しつつあるといえます。
       米国にとってインドが重要であるのは、まず民主主義の国であることが挙げられますが、インドがアジア・太平洋・インド洋の安定と発展に欠かせない国だからです。特に中国の進出を考えれば、インドの重要性がよく理解できます。
       しかし、インドと付き合うのは常に容易とは限りません。それはインドが非同盟の伝統に基づく独立を重要視しているからです。
       中国の台頭、特にインド洋への進出を強く意識して、米国との防衛協力を強化していますが、同時に伝統的な友好国であるロシアとの関係も密接で、イランとも協力関係にあります。
       米国はインドと付き合うに際し、この側面をよく理解する必要があります。
       トランプがこのような複雑な側面を踏まえてインドとの関係を推進できるかが問われます。
       インドは国際機関でその地位にふさわしい役割を果たし得ないでおり、米国はこの面でインドを支援すべきであるというのはその通りでしょう。国連安保理常任理事国入りは容易ではありませんが、米国は引き続き努力すべきです。
       論文はインドのOECD入りを米国が支援すべきであると言っていますが、OECDは先進経済国をメンバーとしており、現時点でのインドにその資格があるかの問題があります。
       インドは日本にとっても重要な国です。日本は極東軍事裁判でインドのパール判事が、被告全員の無罪を主張して以来、インドに好意を持ってきましたが、最近では中国の台頭に対処するためもあり、安全保障の面でインドとの関係強化に心がけています。
       インドが経済的、軍事的に台頭し、外交面でも積極的な活動に乗り出している今、日本もインドと二国間のみならず、例えば日米豪印といった多国間の協力強化にも努めるべきです。